2度のジンギスカンブームと、現在の羊肉ブーム

かつて二度あったジンギスカンブームの中で、特にインパクトが強かったのが2004年頃に首都圏を中心に発生したものである。インターネット普及の影響で一気にブームに火がつき、最盛期には東京だけで200店舗を越えるジンギスカン店があった。マスコミによる報道もその流れを後押しし、輸入量も激増した。背景として、当時、BSE問題で牛肉の輸入が止まり、食肉業者が羊肉を推した事もブームに拍車をかけたのだろう。

しかし、ジンギスカンのように特定の料理が主導するブームはその料理が飽きられると一気に廃れるもので、1年前後でジンギスカンの店舗は激減した。店舗数が減るにしたがって羊肉の輸入量も減少し、かつてのブームが嘘のような羊肉不遇時代に突入していった。また、一過性のブームに乗り、羊肉の取り扱い方をよく知らない料理人が安い肉を適当でない方法で調理して提供した事例も多く、羊肉嫌いを量産してしまう負の側面があったことは見逃せない。

こうして起こった羊肉離れによって、輸入量は2006年の12,000トンをピークとしその後、激減することとなる。さらに2011年には8,000トンを下回り、1万トンを回復するのは2014年まで待たなければならない。※1

※最新資料だと、16年は15年の1.2倍の輸入増となり、14年には及ばずも、順調な伸びを見せている。なお、輸入量が増えたのは韓国と日本だけである。

※資料はMLA豪州食肉家畜生産者事業団サイトより転載。

このような状況の中、なぜ2014年に羊肉は1万トンの大台を回復したのだろうか……。未年(2015年)より前に、2013年から2014年にかけて輸入量が1.3倍に増えている。この期間にラム肉をメインに据える業態の飲食店が増えたこと※2、ラム肉を取り扱うスーパーマーケットの増加したことなど、今も続く静かな羊肉ブームが発生している。皆さんの周りでも、羊肉を見る機会が増えていないだろうか?

今回のブームは、以前のジンギスカンように一過性の「料理牽引型」のブームではなく、様々な調理法で羊肉をメニューに加える飲食店が増えたり、羊肉を看板に掲げる飲食店が増えたりする、「底上げ形」となっていることに注目したい。ジンギスカンのような固有の料理の流行とは関係なく、いろいろな食べ方で羊肉を見る機会が増えているのだ。

羊肉に対する関心の高まりは消費者主導の団体であり、私が代表を務める羊齧(ひつじかじり)協会会員数の増加にも顕著に現れており、ここ3年で会員数は7倍に増加している。現在は1100名を越えさらに増加傾向にある。また、2015年11月開催された協会主催の羊肉のお祭り「羊フェスタ2015」の来場者は1万人を超え、2016年の「大・羊フェスタ2016」では2万人を数えた結果からみてもジンギスカンに象徴される一過性の「料理牽引型」のブームではなく、消費者自身が羊肉を「食べたい!」と感じ、自ら盛り上げる「底上げ型」となっていることを表している。

コラム 羊肉ブームに対しての協会の立場

「この頃羊肉がブームですね!」といわれる事があるが、協会としてはこのブームは決して喜ばしいとは思っていない。ブームの兆しがでるとメディアがそれを多く取り上げる。しかし、その際に使われる言葉は勝手にわかりやすく変換され、例えば「羊肉がブーム」ではなく、「ジンギスカンがブーム」とされてしまうこともある。既述の通り、料理牽引型のブームはその料理が廃れると一気に収束する。モツ鍋やティラミスなど以前ブームとなり、その後、姿を見る回数が激減した懐かしい食物はたくさんある。ブームによって裾野が広がるという面もあるが、大衆化することによって本来の魅力が伝わらず、例えば「羊肉はヘルシー」などとキャッチーな言葉だけで、きちんと調理されず適当なアレンジされた料理として出されることによって、本来の羊肉の魅力が伝わらなくなってしまう怖れがある。

このため、協会としては、企業が広告代理店を通しメディアを使って発生させたブームとして取り上げる……という流れではなく、我ら消費者たちの「羊が食べたい」気持ちによって押し上げられた結果、実態を伴ったブームが起こることを目指している。

参考)協会独自指数・羊指数とは

ここ数年日本では、羊肉の輸入量は増えており、外食産業においても羊肉をメインにした店舗や、羊肉料理を扱う店舗が増えています。
そのため、メディアを始めとした多くの方から「羊肉は、今流行っているのですか?」と質問を受けてきましたが、データとして提示できるものが、貿易統計の輸入量に限られていました。

貿易統計は有益なデータではありますが、羊肉は冷凍やチルドで輸入されるため、輸入時と使用時にタイムラグがあります。そのため、現時点でどれぐらいの羊 肉が消費されているのかが分からず、貿易統計のみをもって「羊は今、流行っています」と言い切れない悩みがありました。

そこで私たちは、消費者団体として、輸入量だけでなく、「消費者が羊肉についてどれぐらい関心を持っているのか」も加味した指標「羊指数」を作りたいと考えたのです。

このアイディアを「実名で責任のある口コミ」が特長である株式会社Rettyに相談したところ、「消費者が羊肉についてどれぐらい関心を持っているのか」を定量的に測るための、各種データを提供して頂けることになりました。

羊指数サイトはこちら

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