世界で一番多く食べられている肉は何か。
直感では「牛」や「豚」と思うかもしれませんが、実際は鶏肉です。 その理由の一つは「宗教」です。
イスラム教では豚肉が禁じられ、 ヒンドゥー教では牛肉が禁じられています。
信者数の多い宗教の禁忌は、当然ながら世界の食肉生産構造に影響を与えます。
その制約にほとんど触れないのが鶏肉であり、それが世界一の理由です。
では羊はどうか。
実は羊肉も、宗教的禁忌がほとんどない肉です。 (もちろん例外的な信仰はあるかもしれませんが、世界規模では禁忌対象ではありません。)
だからこそ、羊は“グローバルフード”なのです。
今回は日本人はあまり気にしていない、宗教と羊という観点でまとめてみました。
ハラルと羊肉
イスラム教圏では「ハラル」という概念があります。 許された方法で屠畜された肉だけが食べられます。
オーストラリア産ラムの多くはハラル処理されています。 宗教的規範に適合する流通体制が整っているため、世界中へ輸出可能です。この「宗教的に問題が少ない」という点は、
羊肉が国境を越えやすい理由のひとつです。代表の菊池はオーストラリアで屠場を見学させていただいたことがあるのですが、イスラムの聖職者が特別な儀式をするとの事でした。
キリスト教と羊
羊は単に「禁忌がない肉」ではありません。 象徴的存在でもあります。
キリスト教において羊は非常に重要な意味を持ちます。
有名な「迷える子羊」という言葉。 これは『ルカによる福音書』に登場するたとえ話に由来します。
100匹のうち1匹が迷子になり、羊飼いがそれを探しに行く。
ここで、
- イエス・キリスト=羊飼い
- 迷える子羊=神の教えから離れた人
という象徴構造が成立します。
また、イエスを「神の子羊」とみなす思想もあります。
人々の罪を背負い、犠牲として捧げられる存在。
羊はキリスト教において、 救済・犠牲・純粋性の象徴だそうです。
日本人が見てる羊と、キリスト教徒が見ている羊はかなり違いそうです。
なぜ羊だったのか?
なぜ牛でも豚でもなく、羊なのか。それは、キリスト教が生まれた地域で羊が日常的な家畜だったからです。
聖書に登場する人物―― 皆さんも聞いたことあると思います。
- アベル(アダムとイヴの次男さん)
- ヤコブ(ユダヤ人の祖)
- モーセ(水を割る人)
- ダビデ(イタリアに銅像があるゴリアテと戦った人)
彼らは羊飼いでした。
羊は身近な家畜であり、 羊飼いは誰もが知る職業だった。(モーゼとヤコブは一時期)
だからこそ、羊が象徴になったのです。
もし牛中心の地域で生まれていたら、 「迷える子牛」になっていたかもしれません。
宗教的象徴とは、その土地の生活と深く結びついています。
聖書の中のラム肉
旧約聖書『出エジプト記』では、 ヘブライ人がエジプトを脱出する際、多くの羊を伴ったとされています。移動中に食べたのは、無発酵パンとラム肉のロースト。
この出来事は、現在のユダヤ教の祭り「過越(ペサハ)」へとつながります。
儀式的晩餐「セーデル」では、ラム肉が象徴的に登場します。
羊は単なる食材ではなく、 歴史と信仰の記憶を背負った肉でもあります。このあたり羊が明治に入ってきた日本ではなかなかわかりにくい所です。
キリスト教とラム肉
キリスト教でも、復活祭などの祝祭日に羊が食べられる習慣があります。10世紀には、ローマ教皇の復活祭の晩餐で子羊の丸焼きが提供された記録も残っています。
英国圏には「サンデーロースト」という文化があります。
日曜日の昼に肉(牛・羊)を食べる習慣です。
もともとは労働者をねぎらう意味合いでしたが、 祝祭日に肉を食べるというキリスト教的感覚と重なり、 羊=ごちそう、というイメージが定着しました。代表の菊池もあオーストラリアやアイスランドでこのローストを食べて「なんか、大晦日のすき焼きの立ち位置」と話していました。(ちょっと違うと思う)
イスラム教と羊
イスラム教でも、犠牲祭(イード・アル=アドハー)の中心は羊です。
アブラハムが神に子を捧げようとした故事に由来し、
その代わりに羊が捧げられたという物語があります。
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教。
いわゆるアブラハムの三宗教すべてにおいて、
羊は重要な役割を担っています。
これは偶然ではありません。同じ地理的・文化的背景を持つ地域で生まれた宗教だからです。ごちそうを見て三つの宗教の共通点を知りました。
羊は「禁忌が少なく、象徴性が強い」
羊肉は、
- 宗教的禁忌が少ない
- 主要宗教で象徴的意味を持つ
- 祝祭・儀礼に使われる
という、非常に特殊なポジションにあります。
単なる“食べられる肉”ではなく、 “意味を持つ肉”なのです。すごいぞ羊。
グローバルフードとしての羊肉
世界中で食べられ、 宗教的障壁が低く、 象徴性を持ち、
ごちそうの位置づけを得ている。
これが羊肉の立ち位置。日本だと地位が低すぎるんですよね。
日本ではまだそこまで宗教性を意識することは少ないですが、
世界基準で見れば、羊は非常に“強い”肉です。
羊がグローバルフードである理由は、
味や栄養だけではありません。
歴史と宗教が、 羊を支えているのです。このあたり理解すると、インバウンドなどでの羊の優位性を再確認していただけるのでは??とも思います。