羊肉は、世界でとても長い時間、人の暮らしと一緒に歩んできた食肉のひとつです。
中東や中央アジア、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア。
場所は違っても、多くの地域で羊肉は、日常的に食べられ、同時に特別な日のごちそうとして大切にされてきました。
一方で、日本ではどうでしょうか。
「安い」「臭い」「クセがある」
そんなイメージを聞くことが、今でもあります。
でも、それは羊肉の本来の姿ではない、というのが正直な実感です。
羊肉が世界中で食べられてきたのは、歴史が長いから、という理由だけではありません。
今の時代だからこそ、見直されているポイントがいくつもあります。
ひとつ目は、宗教的な制限が少ないこと。
羊肉は、国や宗教を越えて、同じ食卓を囲みやすい食材です。
誰かを除外せず、みんなで食べられる。
これは、食の世界では意外と大事なことだと思っています。
ふたつ目は、環境への負荷が比較的低いこと。
羊は草を主食とし、自然放牧を基本とした飼育が可能です。
大がかりな設備を必要とせず、土地に合った形で育てられる点も特徴です。
みっつ目は、命を無駄なく使えること。
羊は肉として食べるだけでなく、骨や脂、皮まで、
医薬品や化粧品、衣料品、工業製品など、さまざまな分野で活用されています。
そして、よっつ目。
羊は体が小さく扱いやすいため、女性や高齢者でも飼育しやすい家畜です。
小規模畜産や地域産業のモデルとして、世界各地で注目されている理由のひとつです。
世界の多くの国では、羊肉は特別な場面で登場します。
国家行事や祝祭、晩餐会などで、子羊のローストが振る舞われることも珍しくありません。
それは、羊肉が「きちんとした場で出す肉」「もてなしの肉」として
長く扱われてきたからだと思います。
また、漢字文化圏では「羊」という字は、
義、善、美といった、前向きな意味を持つ漢字の中にも使われています。
人類の歴史とともに生きてきた存在として、
私たちはどこかで羊を「良いもの」「大切なもの」と感じてきたのかもしれません。
羊肉の歴史を知り、文化を知り、暮らしとの関わりを知る。
それだけで、羊肉の見え方や、おいしさは大きく変わります。
羊肉は、特別な人のためだけの食材ではありません。
世界中で、日常にも、ハレの日にも寄り添ってきた食肉です。
羊肉を通して世界を見てみると、
国や文化の違いも、少し身近に感じられるようになります。
羊肉は、世界のごちそう肉。
そう考えると、日本での羊肉のこれからも、
もっと面白くなっていく気がしています。