― この人たちがいるから羊肉は食べられる ―
羊飼いは、人類の歴史の中でも最も古い職業のひとつです。
家畜としての羊を世話し、自然環境の中で育てながら、外敵から守り、資源として活かしていく仕事です。
宗教や神話の中でも、羊飼いは重要な役割として描かれてきました。
キリスト教の司祭が持つ杖も、もともとは羊飼いの杖がモチーフとされています。
しかし、日本において羊の飼育頭数は多くなく、羊飼いは決して多い職業ではありません。
では、実際にどのような仕事をしているのか。
その一年と日常を見ていきます。
羊飼いの一年
羊の飼育は、季節ごとに明確な仕事の流れがあります。
- 9〜10月:繁殖期
- 11〜12月:冬季の舎飼い
- 2〜3月:出産シーズン
- 4〜5月:牧草地の整備・毛刈り
- 6〜7月:子羊の離乳・一番草の収穫
- 8月:二番草の収穫
このように、羊そのものの管理だけでなく、「餌となる草づくり」も重要な仕事の一部です。
シーズンごとの主な作業
年間の流れの中でも、特に負荷の大きい時期があります。
- 2〜5月:出産期(ほぼ24時間体制)
- 5月中旬〜6月初旬:牧草の収穫(一番草)
- 8月末〜9月初旬:牧草の収穫(二番草)
- 5月:毛刈り
- 6月:人工授精(約1か月、様子を見ながら実施)
- 10月:比較的落ち着く時期
- 通年:2〜3か月に1回の駆虫処理
羊飼いの仕事は、単に動物の世話だけでなく、農業と密接に結びついています。
羊飼いの一日(7月の例)
日々の仕事は、朝早くから始まります。
- 5時半
朝の給餌(牧草と配合飼料)
畜舎の清掃、飲み水の交換、食べ残しの処理
健康チェック(異常の有無を確認)
※ここまでで午前9時頃まで - 午前中〜昼
牧草の運搬や農作業 - 11時頃
休憩(夏場は暑さを避ける) - 14〜15時頃
作業再開 - 16時頃
夕方の給餌
一日を通して、羊の状態を細かく観察し続けることが求められます。
羊飼いに聞く
Q. 一番大変なことは?
良い牧草を作ることです。
酪農と同様に、羊の飼育でも草づくりは非常に重要な仕事です。
6月の一番草、8月の二番草といった収穫や乾燥の出来によって、その年の飼育状態が大きく左右されます。
羊は一日に約3kgもの草を食べるため、安定して良質な草を確保することは簡単ではありません。
Q. 健康管理で気をつけていることは?
寄生虫の管理です。
寄生虫は羊の大きなリスクの一つであり、特に放牧されている羊は感染しやすい傾向があります。
自然界に存在するものなので完全に排除することはできませんが、増えすぎると体調を崩す原因になります。
そのため、駆虫薬を使いながらバランスを取る必要があります。
ただし、薬を使いすぎると耐性がつくため、その調整が難しいところです。
適切に管理できないと命に関わるため、非常に気を使うポイントです。
羊飼いという仕事
羊飼いは、単なる畜産業ではありません。
自然、動物、そして人の生活をつなぐ仕事です。
羊肉が食卓に届くまでの裏側には、こうした日々の積み重ねがあります。
この仕事があるからこそ、私たちは羊を食べることができるのです。
お話を伺ったのは
今回お話を伺ったのは、羊飼いの関口博樹さん。
青森県階上町で羊の飼育を行っており、もともとは東京都練馬区出身。イタリアンのシェフとして働いていた経験を持ち、現在は羊と向き合う日々を送っています。
階上町の自然に魅了され移住し、現在は約50頭の羊を飼育。
料理人から羊飼いへという異色の経歴を持ちながら、日々現場で羊と向き合い続けています。