Vol.4 ひつじ工房より“ひつじと日本と羊毛と”

みなさん!突然ですがクエスチョンです!皆さんは<国産ウール>と聞いて、どんなことを考えますか。

羊肉業界でも国産が注目されているような昨今、ウールはというとどうなのでしょう。

「この原毛は国産の羊毛で、けっこうめずらしいんですよ」

先日開催された羊フェスタ2018に出展した際、宮城県・さとうみファームの金藤さんがこんな風におっしゃっていました。
販売していた羊毛はさとうみファームで生まれ育った羊たちのものです。

そう、実は国産ウールは現在かなりめずらしい存在。
皆さんがふだん身に着けているウールの衣服もほとんどすべてが輸入された羊毛(あるいは海外の羊毛から製造・輸入された製品)です。

日本にもひつじはいるのに―現在約2万頭―なぜ国産ウールはめずらしいのか。
日本と羊毛にはどんな関係があるのか。今回はそんな疑問についてお話ししましょう!

ひつじと日本

そもそもひつじはいつ頃から日本にいるのでしょうか。

諸説あるものの6~9世紀、推古天皇と嵯峨天皇の頃に朝鮮を経て輸入されたという記録があるようです。
また16世紀には毛織物が初めてポルトガルから持ち込まれ、
『ラサ産の』を意味するraxaを「らしゃ」と聞き取った日本人は高級な布地という意を込め「羅紗」と字を当てます。

それからさらに200年遅れて、オランダ船に乗せられていた“ひつじ”と出会った長崎オランダ商館の人々は、
当時中国でひつじが「緬羊」と呼ばれること、
そして羅紗が生産されることにちなんでひつじを「羅紗緬(ラシャメン:その後転じて西洋人の妾となる日本人の意に)」と呼ぶようになります。

本格的にひつじが輸入・飼養されはじめるのは明治維新後のことです。
軍服製造など羊毛の需要が拡大したことから、政府は国内生産の必要性を説き、最初はメリノ種(vol.2で紹介)の輸入が試みられました。
が、湿度の高い気候にあわずに断念、毛肉兼用種であるコリデールが輸入される運びとなります。


▲コリデール種。毛肉兼用種。白くて比較的良質な毛を産出する。

やがて太平洋戦争終戦に伴い、めん羊飼育は急速に発展して自給衣料を確保できるようにまでなり、
1957年その数は94万5000頭(現在の47倍以上!)とピークを迎えます。
この当時には羊毛委託加工業といって、家庭で飼養し毛刈りした羊毛を業者に託せば、毛糸や服になって戻ってくるという事業までありました。

★国産ウールの衰退

こうして戦後、いわば爆発的に国内に普及した羊毛生産は、
1959年に冷凍羊肉貿易、そして1961年に羊毛貿易が自由化されたことでメリットを失い、急速に衰退します。

また、1960年代に拡大する羊肉の需要を満たすために、サフォーク種の輸入がコリデール種に台頭し、
日本国内でのひつじ飼育の目的は羊肉生産へとシフトしていきました。

そして現在、冒頭にお話しした通り、羊毛のほとんどはオーストラリアそしてニュージーランドからの輸入が占めていて、
その約80%がメリノ種となっています。


▲サフォーク種。肉用種。“ひつじのショーン“としてお馴染みの真っ黒な顔と四肢が特徴的。

 

★国産ウールの新しい動き

そんななか、2011年、京都の“羊の原毛屋 SPINNUTS”が主催する国産羊毛コンテストが始まり、国産ウールが見直されています。
肉用種がメインであるなか、国産ウールの評価基準を設けると共に販売路を確立することで、
国産ウールの品質向上をめざすこの取り組みは全国に拡がっています。

羊肉が盛り上がり、ひつじが国内に増えれば、おのずと産出される羊毛も増えるもの。

近い将来、みなさんの手元にも国産ウール製品が届くかもしれませんね!

【プロフィール】
中村咲蓮

北里大学獣医学部獣医学科在学。奈良に育ち、青森に住まう。
獣医になるべく勉強する傍ら、大学で廃棄されていた羊毛という資源を活用することに使命を感じ《北里ひつじ工房》をたちあげる。
フェルトドールから実用小物までなんでも製作してみたいこの頃。
ファンキールックスと裏腹に手芸が趣味だと驚かれることもしばしば。

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