何故、今の羊肉は美味しいのか?

■カタクテクサイ

「羊肉=カタクテクサイ」

いつの頃からか日本人の中に定着した方程式。
この方程式の影響力は凄まじく、驚くことに現在の日本国内における国民ひとりあたりの羊肉消費量は年間約200グラム。(牛肉2.6キロ)

ほとんどの日本国民が羊肉を食べたことがない、もしくは食べても美味しくなかったという答えがこの数字に表れています。
この方程式が成り立った説明は長くなるので割愛しますが、昨今羊肉の評価は変わり始めてきていると実感します。

この1年で全国的に羊肉を扱う飲食店が増えていることと、メディアでも羊肉特集が組まれるなど、羊肉は良くも悪くもブーム化の傾向にあります。

「カタクテクサイ」から「美味しい」という評価に変わり始めている羊肉。

羊肉国内消費量の70%はオーストラリア産羊肉(以下、豪州産羊肉)ということもあり、
比較対象として2000年代初頭のジンギスカンブームと現在のブームでは豪州産羊肉を取り巻く環境にどんな変化が起きているのかを検証します。


今年11月に行われる羊の祭典「羊フェスタ」には、昨年2日間で3万人が来場。毎年来場者数が増えている。写真はオーストラリアラムPR大使「ラムバサダー」の面々。

■大きい羊の味

羊大国オーストラリア(以下、豪州)で思い浮かぶ品種としては、保湿性、防臭効果の高い羊毛種を代表する「メリノ」が挙げられます。
人口2200万人、羊7000万頭という豪州にとって羊毛、羊肉の輸出は一大基幹産業でもありますが、
化学繊維の発達にともない羊毛需要は減少し輸出量にも影響を及ぼします。
羊輸出大国のプライドの為にも、この問題を解決する為に何が起きたか。
その答えは三元交配などの交配方法の変化です。
家畜化の歴史が長い羊は人間の用途によって様々な品種改良が行われており、全世界中で3000種以上が存在すると言われています。

 


▲同じ顔が白い羊でもよく見ると様々な品種が群れをなしています。

メリノ、サフォーク、ポールドーセット、サウスダウン、ドーパー・・・。
様々な品種を掛け合わせることにより豪州の羊は大型化しています。
一概に大きいから美味しいとは言えませんが、「美味しい」という字は「大きな羊の味」という構成で成り立っていることから、
肉自体の変化としてこの交配方法の変化による大型化がひとつの要素と考えられます。

■加工技術の進化

豪州ではひとつの屠畜場で週に約4000頭の羊が屠畜されています。日本の羊は1ヶ月弱でいなくなってしまうのが豪州の規模感です。
食肉は人の手が触れることにより品質が低下し、衛生面や品質を確保する為に豪州では屠畜場の機械化が進んでいます。

羊肉は「鮮度」が命。

漢字シリーズになってしまいますが、鮮度の「鮮」は魚と羊の鮮度を追い求めることから出来上がった文字とも言われています。
鮮度を守るための取り組みとして、屠畜場のインフラ整備を率先して行っているのが羊大国豪州でもあります。

■羊肉の取り扱い

2000年代に都内近郊で一大旋風を巻き起こしたジンギスカンブーム。
急速に増えたジンギスカン屋は、羊肉の取り扱いに慣れていない業者が安易にブームに便乗。
劣化した羊肉を提供し閉店する店舗が続出する結果となりました。

ブームが残したものは「クサクテカタイ」という方程式でしたが、羊肉を扱うきっかけを作ったことも事実。

ジンギスカンのみならず様々な飲食店で羊肉を取り扱う経験値が増えたことにより、
適正な品質管理、最適な調理方法が確立されたことが、何よりも羊肉が「美味しい」に変わり始めた一番の要素であると感じます。


▲写真はアイスランド羊肉専門店OZの
「ラム肉のももたたき」

■羊肉をめぐる冒険

現在日本国内には国産、豪州産など産地、月齢の異なる様々な羊肉が存在します。
それぞれに特徴があり、取り扱いを間違えなければ美味しい羊肉であることは間違いがありません。
この記事をきっかけに、皆様に羊肉をめぐる冒険をお楽しみ頂けると幸いです。

 

写真提供:関澤波留人MLA豪州家畜生産者事業団・ハーネットコーポレーション

【プロフィール】
関澤 波留人

羊SUNRISE オーナー。オーストラリアラムPR大使「ラムバサダー」
国内の様々な緬羊牧場を自家用車で車中泊3,000km走破し訪問。
オーストラリアの牧場も視察した後に2016年麻布十番にジンギスカン専門店「羊SUNRISE」
開業。
「羊の夜明け」
店名の由来を実現すべく国内外多くの羊飼いと向き合い品種、月齢、飼養管理方法の違いによって生まれる味わいを、
羊の栄養価や歴史を含め「羊肉をめぐる冒険」としてお客様に提供している。

http://sheepsunrise.jp

 

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